刑事事件の保釈とは、保釈の意味、保釈金の相場
Q.家族が逮捕されたのですが、すぐに保釈してもらうことはできますか?
法律的な意味での「保釈」というのは、事件が起訴された後に限って請求できるものです。したがって、逮捕の直後に保釈を請求することはできません。しかし、逮捕の後に勾留が付かないようにすることで(又は一度決定された保釈を取り消すことで)、保釈と同様の効果、すなわち留置場からの釈放を得ることができます。
勾留の決定を阻止するためには、本人が逃亡したり証拠を隠滅したりするおそれがないこと、また勾留によって本人以外の者も多大な不利益を受けることを主張し、これを裏付ける資料を提出する必要があります。これらの活動は、捜査機関は何もしてくれないため、弁護士を選任して、弁護士を通じて行う必要があります。刑事弁護士を私選でつけることは、逮捕される前や逮捕された当日でも可能です。
Q.保釈はどのような場合に認められますか?
保釈は、裁判官が必ず認めなければならない場合(権利保釈といいます)と、裁判官の裁量によって認めることができる場合(裁量保釈といいます)とがあります。
権利保釈は、以下の事情がないときに認められます。すなわち、①起訴された犯罪がある程度以上の重さの罪であることや、②長期10年を超える前科があること、③常習としてある程度以上の重さの罪を犯したこと、④証拠隠滅のおそれがあること、⑤被害者などの関係者に害を加えたり畏怖させる行為をしたりするおそれがあること、⑥氏名・住居が分からないこと。
裁量保釈は、上記①~⑥の事情があって権利保釈が認められない場合でも、なお保釈が適当だといえるような特別の事情があるときに認められます。犯罪の性質や情状、被告人の経歴、行状、前科や健康状態、家族関係、公判審理の進行状況などの諸事情が考慮されます。
Q.保釈が認められる率はどれくらいですか?
事件によって異なります。また、同じ罪名の事件でも、罪を認めているか否か、共犯者がいるか否かで、その確率は大きく異なります。統計的には、平成23年の保釈許可率(保釈を請求した事件のうち保釈が許可された率)は56.6パーセントでした(ただし、権利保釈と裁量保釈との内訳は不明です)。
Q.保釈が認められにくい犯罪というのはありますか?
あります。正確には、保釈が認められにくい犯罪があるというより、保釈が認められにくい事実関係があるという方が、実態に即しているでしょう。まず、容疑を否認している事件では、証拠隠滅のおそれがあるとして、保釈がなかなか認められません。容疑を自白している場合でも、共犯者が捕まっていないときは、証拠隠滅のおそれがあるとして、保釈が認められにくくなる傾向があります。このように、保釈の認められるかどうかに関しては、「どの類型の犯罪か」よりも、「どのような事実関係(証拠関係、共犯関係、認否状況、示談状況など)か」の方が重視されます。
Q.保釈は弁護士でなくても請求することができますか?
弁護士以外にも、被告人本人や、その配偶者、父母・祖父母、子供・孫、兄弟・姉妹、また法定代理人・保佐人も、保釈を請求することができます。もっとも、保釈を請求するに当たっては、事実関係に即した主張を組み立てる必要があります。また、保釈請求書では、権利保釈が認められない場合に備えて、裁量保釈が認められるべきことまで書くのが通例です。この様に、保釈請求書を書くにあたっては法的な知識や経験が必要になるため、刑事事件に精通した弁護士に依頼した方が、保釈の認められやすさは高まります。
Q.保釈を請求してから認められるまではどれくらい時間がかかりますか?
問題なく保釈が認められる事件においては、請求から釈放まで、だいたい2、3日かかる場合が多いです。最初の保釈は、事件が起訴された翌日に請求することになりますが、保釈請求書を受領した裁判官は、その後、担当検事の意見を聞き、記録の内容を精査する必要があるので、決定が出されるまでにはだいたいこれくらいの時間がかかります。ですので、例えば、月曜日に保釈を請求したとすれば、火曜日、水曜日と中2日、審理に時間が使われ、木曜日前後に保釈の決定が出るケースが多いです。また、土日は裁判官が休みのため、金曜日に保釈を請求したとすれば、月曜日、火曜日と審理のために時間が使われ、水曜日あたりに保釈の決定が出るケースが多いです。仮に水曜日の午前中に保釈の決定が出たとすれば、弁護士がすぐに保釈保証金を裁判所に収めに行き、保釈金が納付されたことの通知が警察署に届いて、被告人は留置場から釈放されることになります。保釈の決定→保釈金の納付→釈放の流れは、スムーズに行けば1日で完結することが可能です。他方で、保釈の決定が出たとしても、保釈金の納付がなければ、被告人は釈放されません。したがって、もし水曜日に保釈の決定は出たものの、スケジュールの都合上、木曜日に留置場に迎えに行きたいなどという場合は、本人と相談して、木曜日に保釈金を納付するという手順を取ることもできます。保釈金を納付してから本人が釈放されるまでは、だいたい2、3時間のタイムラグが生じることが多いです。
Q.保釈金に相場はありますか?
おおよその相場はあります。同じ様な事件では、同じ様な金額になることが多いです。ただし、これは法律で明確に定められている訳ではなく、保釈金の金額の決定はもっぱら裁判官の裁量に委ねられています。一般的な事件では、150万円から200万円の範囲で決定されることが多いです。保釈金は、被告人の逃亡を予防するためのものなので、同じ罪名の事件でも、被告人の生活状況などを踏まえて、その金額には差が生じます。
Q.保釈金は有罪になると没収されますか?
有罪になっても保釈金は没収されません。判決後すぐに全額返却されるのが原則です。保釈中に逃亡して裁判を欠席すれば没収されることになりますが、ちゃんと決められた期日に法廷に出て裁判を受け終われば、その全額が返却されます。
Q.保釈金はどういう場合に没収されますか?
保釈中に逃亡して裁判に出席しなかった場合や、共犯者に連絡を取って証拠隠滅を図った場合など、一定の決められた条件に違反した場合に没収されます。法律上は、これを「没取」〔ぼっしゅ〕といいます。
Q.保釈金はいつ返却されますか?
通常、判決の言い渡しから数日~1週間ほどで、納付の際に指定しておいた口座に振り込まれるかたちで返却されます。弁護士が保釈を請求した場合は、その弁護士の業務用預かり口口座を、保釈金の返却口として指定することになります。