盗撮の刑事事件を弁護士に相談
Q.盗撮はどのぐらい重い罪なのですか?
ひと口に盗撮といっても、刑の重さは、迷惑行為防止条例違反、軽犯罪法違反、建造物侵入のどれに当たるかによってケースバイケースです。
まず、公共の場所や乗り物で盗撮をすれば、迷惑行為防止条例違反となります。その刑の重さは、たとえば東京都と神奈川県では1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。これに対して、千葉県と埼玉県では6か月以下の懲役または50万円以下の罰金です。
次に、人の住居、更衣室や便所、そのほか人が通常衣服を着けない場所で盗撮をすれば、軽犯罪法違反となります。その刑の重さは、30日未満の拘留または1万円未満の科料です。そして、当初から盗撮をする目的で住居や建造物に立ち入ると、建造物侵入罪となります。その刑の重さは、3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
Q.盗撮で検挙されて取り調べを受けた後、帰宅を許されました。このような場合でも、何らかの罰を与えられるのでしょうか?
検挙当日、警察から家に帰してもらえた場合でも、その後に再び呼び出されて、最終的に刑罰を与えられるケースがあります。ご相談の事案では、捜査の仕方が在宅(留置場で生活せず、自宅から呼び出しに応じて警察署に通い取り調べを進める方法)になっただけで、刑事処分はこれから捜査を遂げたうえで決められることになるからです。最近の盗撮事件では、このパターンで捜査が進められる場合が多いです。ですから、大切なのは、釈放されたからといって安心せず、最終の刑事処分を見据えて慎重に行動することです。日々の法律相談の中でも、釈放されたことで安心して、被害弁償や示談を怠り、意に反して罰金刑を受けるなどといったケースが散見されます。この様な事件でも、弁護士が早期に間に入り、被害者の方と示談を締結することで、不起訴処分を得て、前科を付けずに社会復帰できるケースが数多くあります。
Q.罰金でも盗撮の「前科」になってしまうのでしょうか?
罰金も有罪判決の1つなので、その履歴は前科になります。罰金は前科ではない、という考え方は誤りです。今回の事件がまだ初犯という場合は、弁護士に依頼して被害者の方と示談を成立させることで、不起訴処分を得て、前科を付けずに事件を終了させることができます。
Q.盗撮の前科がつくと、他人に知られてしまいますか?
捜査機関以外の人間が、他人の前科を照会する方法はありませんが、履歴書の賞罰欄に記入を求められたりして、前科の存在が他人に知られることがあります。ほかにも、海外旅行のビザを申請するときに、前科の内容が不利益に考慮されることがあります。これらの機会に、前科があることが他人に知られてしまうことがあります。
また、将来的に法改正があった場合等、予測ができない状況で前科の存在が明らかになることが想定されます。近年の性犯罪に対する厳罰化の傾向を踏まえると、前科はどんな形であれ付かないにこしたことはありません。
Q.盗撮の前科がつかないようにすることはできますか?
できます。検察官から不起訴処分を得れば、逮捕された後であっても、盗撮の前科は付きません。不起訴処分を得るには、盗撮の場合、被害者の方と示談を交わして刑事責任を許してもらう必要があります。もっとも、被害者の方は、加害者本人やその家族とは会ってくれないことが通常です。これに対して、弁護士が間に入れば、被害者の方との示談交渉もスムーズです。そのため、前科がつかないようにするには、できるだけ早い段階で、弁護士に事件を依頼するのが一番です。「できるだけ早い段階で」事件を依頼するのは、被害者との話し合いの時間を十分に確保するためです。
Q.風俗店での盗撮も犯罪になりますか?
風俗店の様な個室・密室で盗撮をした場合でも、犯罪になる場合があります。まず、軽犯罪法の「のぞき見(窃視)罪」という犯罪に該当する可能性があります。また、当初から盗撮の目的があって入店した場合には、建造物侵入罪に該当する可能性もあります。
なお、盗撮の犯罪というと、典型的なのは迷惑行為防止条例違反です。しかし、風俗店の建物内は、公共の場所ではないので、その中で盗撮をしても迷惑行為防止条例違反にはなりません。とはいえ、上記のようなのぞき見罪と建造物侵入罪という犯罪にはなり得るので、注意してください。
Q.盗撮をした風俗店から示談金を支払うよう求められているのですが、示談した方がいいでしょうか?
盗撮による風俗トラブルの事件では、法外な金額の示談金が要求されるケースが多いです。また、一度は示談金を支払ったのに、その後に何度も重ねて示談金を要求されるケースも多いです。弁護士が間に入れば、適正な金額で、そして、後に問題を残さない形で示談を成立させることができます。そのため、素人判断で示談金を支払ってしまう前に、一度、示談の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。仮に、示談交渉などは自分で行うとしても、有効な示談書の書き方などについてアドバイスを受けることができます。
また、場合によっては、示談金を支払う必要性がない、というケースかもしれません。例えば、デリヘル嬢を自宅やホテルに呼んで盗撮をした場合には、デリヘル嬢を派遣した店は犯罪被害者ではないので、店との間で示談をする必要は本来ならばありません。もっとも、その店舗との関係を一切断ち切りたいなどの希望があってどうしても示談したいという場合には、示談書を作り、今後一切の請求を受けなくて済むような条項(清算条項といいます)を盛り込むべきです(ただ、あなた1人で清算条項を作るのは難しいですし、法的なミスが残る心配もありますので、示談書の作成自体は弁護士のアドバイスを受けた上で行うことをお勧めします)。
Q.盗撮で検挙されて警察にスマホを押収されました。実は余罪があって自宅のパソコンにも盗撮動画・写真があります。これは警察に伝えるべきでしょうか?
余罪を自分から警察に伝えるべきかどうかは、伝えることのメリットとデメリットのどちらを重視するかによって左右されるので、まずは弁護士とご相談されることをお勧めします。
たしかに余罪を自ら申告することは、反省を示す情状の1つにはなります。ただし、余罪が多ければ多いほど、逮捕されるおそれは強まりますし、刑は重くなります。自宅のパソコンの中に余罪の動画・写真があることを警察に伝える際には、そのリスクをよく理解しておく必要があります。
他方で、余罪の証拠を犯人自らが隠滅することは、それ自体は犯罪ではありません(ただし、余罪の証拠隠滅行為がばれた場合には、すでに発覚している犯罪との関係では、悪い情状にはなります)。このように、余罪の証拠については、隠すことと自ら申告することのどちらにもメリット・デメリットがあり、複雑な問題です。それぞれのメリット・デメリットについて、弁護士に相談して具体的な説明を受けることをお勧めします。
Q.警察にスマホを押収されているのですが、返してほしいと言うことはできますか?
押収されているスマートフォンは、返してくれるよう請求することができます(還付請求といいます)。ただし、個人が返還を請求すると、捜査機関から何かと理由をつけてはぐらかされることもあります。これに対して、弁護士が請求すれば、捜査機関も適切に対応せざるを得なくなります。もっとも、盗撮に用いたスマホの場合ですと、返却される時期は、中身の復元や解析が終わってからになります。この点についても、復元・解析を急ぐよう弁護士から要求すれば、通常よりも早く返還されることが期待できます。